永谷研一/ネットマン社長ブログ
「私にお任せを」って言っちゃった手前引くに引けず、本を読みながらの綱渡りのコンサル

「私にお任せを」って言っちゃった手前引くに引けず、本を読みながらの綱渡りのコンサル

永谷研一/ネットマン社長ブログ

来週の土曜日11月21日(土)17:00ー19:10に
高知県の梼原町主催のオンラインフェス「未来の学びフェスティバル2020」
で登壇します。「私のスキなこと!を叶える力」と題して、とくに若者向けに私の拙いキャリアの中で実践したり考えてきたことを伝えることになっています。

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私の講演ネタ(主に失敗談)は以下のようなお品書きがあります。よく学生向けの講演では、自己紹介をしたあとに、スマホを出してもらいアンケートで投票数が多かったものから、時間が許す限り話すという方法を使っています。

永谷研一失敗談お品書き

1) 「おいおい電気代もったいねー。帰れ帰れ!」
 頭を殴られたくらいの衝撃!徹夜で働く意味を考え抜く

2)「私にお任せを」って言っちゃった手前引くに引けず
  本を読みながらの綱渡りのコンサル

3)「よし!やってみろ。でも絶対ばれるなよ」
  会社のルールを超える。その意味がわかってズッコケる

4)借金が1億超。業績ダウンで返せない。 
 別部屋に連れて行かれそこで起きたこととは。

: (全部で15個くらいあります)

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今回の梼原のフェスの事務局の学生さんに事前に「何聞きたい?」って聞いたら

正直に言うと、全て気になります!!!!!!(笑)
どうしても一つだけ選ぶ(とても贅沢な権利)としたら、
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2)『私にお任せを』って言っちゃった手前引くに引けず、
本を読みながら綱渡りのコンサル

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です。というのも、私はこの一年、頼まれごとは試されごとだと思い、
『できます!私に任せてください!』というようにしていたのですが、
いろいろ課題も見えてきて。周りの学生からもチャレンジしたいけど、できるか不安でなかなか引き受けられないという相談も受けるので。
ビジネスにおける『私にお任せを』の永谷さんの経験を伺いたいです。
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と返信が来ました。
なので、今日はこのことを書きたいと思います。

これは、私がSE(システムエンジニア)になりたての26歳ころの話です。

私の新卒はメーカーに就職し工場でPOSレジ(コンビニにあるレジ)の品質保証の仕事を2年行いました。振動試験やカミナリ試験や耐久試験を行いデータを取り、出荷指示を与えるものです。時には、製造ラインにいって職長さんたちに部品の交換を依頼することもありました。
一度梱包した製品の部品交換となると大変で、頼み方を間違えると「この若造が!」とブッ込まれたことも時にはありました。
でも、工場で働く基本はここで叩き込まれたと思います。

どうしてもシステムエンジニアの仕事がしたくて25歳で大手SIerに転職しました。工場勤務の経験があるということで、製造業を担当する部門に配属されました。

ある印刷工場の生産管理システムが私の最初の責任ある仕事でした。
紙コップの工場でした。アイスクリームのカップやコーヒーの紙コップ、納豆も紙コップなんですね。1日何十万個の様々なコップが製造されて出荷されています。

印刷2

始まりは、課長について鞄持ちでいった顧客との打ち合わせの帰り
「あの工場は、永谷、お前に任せるわ。できるよな」
と突然言われ、とっさに
「あっはい。私にお任せを」
と言ってしまったのです。

何が任せられたかというと顧客の工場の生産管理システムのプロジェクトマネージャー(PM)です。社員はたった1人私だけ。顧客側は工場長、生産管理課長、生産管理課の社員そしてもちろん製造現場の職長さんです。顧客側のシステム部門の方もいましたが、PMの配下に入ります。

・システム要件定義1年
・システム開発1年
・システム運用1年
の3年がかりのプロジェクトとなります。
(システム開発フェーズになるとソフトウェア会社のプログラマが8人ほどPMの配下に入ります。10人が関わり2年くらいやるので200人月程度のプロジェクトです)

繰り返しですが、システムの構築の全責任をもつSIerの社員は私1人です。しかも仕事場所はほぼ客先常駐です。
要は誰も助けれくれない状態ということです。時は仕事が有り余るほどあった時代。先輩たちだって他のプロジェクトにアサインされているので本社に戻っても会えることは稀でした。

生産管理システムとはどんなものか説明します。言葉通り生産を管理するものですが、中心となるのがどの機械で何を何個作るかという
「製造指示」
です。最適値をコンピューターで計算し各機械の横にある端末に表示するのです。一度に何万個という紙コップを作るので間違ったら大変なことになります。もちろん機械は何十台とありますので、同時に違う形のカップを作る指示を行います。

紙コップの製造の工程というのはおおよそ以下のような工程です。

1)輸送:デッカいロール紙を別の工場から運ぶ
2)裁断:ロール紙から扇型を作る。また底の丸い紙型を作る
3)成型:カップを作る(扇型の紙を丸めて丸い紙型をくっつける機械)
4)塗料:ろうを塗る(紙自体が撥水になっている場合はこの工程とばす)
5)梱包:数十個をパッキングして筒状の段ボールにしまう
6)出荷:注文別にトラックで輸送する

印刷0

印刷1


私が構築したシステムは、生産管理システムの中でも、MRP(Material Requirements Planning:資材所要量計画)と呼ばれるものでした。
この仕事のシステム開発で解決すべき問題は3つありました。

1)受注生産ではなく見込み生産
     紙コップは見込み生産が多いのです。簡単にいうと夏に売れるアイスクリームのカップは前の冬の間に作っておきます。ということは需要を予測して作るわけです。どのようなデータ(例えば気候)を入力して未来をどう予想するのか。これが大きい問題でした。

2)中間在庫をゼロに
 モノの形が変わりますので、単位も変わります。最初はロール紙ですから「メートル」、その次は、型に裁断されるので「個」、最後は出荷されるときは複数個が1つのダンボールに入るので「パック」になります。どうしても余りがでますが、そうなるとコスト増になりますので、中間在庫をゼロに近づける製造指示が必要になります。

3)型替をなるべく少なくしたい
 成型の機械は、カップの種類によって金型を変える必要があります。金型を変える仕事を「型替え」といいますが、それが熟練の技が必要な仕事で、1回あたり4日程度かかります。よってなるべく型替えを少なくして、一回金型をセットしたらたくさんの量を製造するようコンピューターで計算して製造指示を出すわけです。
 ここでの問題は、急な注文です。どうしても営業が急な仕事をとってきてしまうのです。すると、どこかの機械を止めて型替えをしなくてはいけません。様々な計画の見直しが必要になります。
 さて、どの注文をどの程度移動させることが可能なのか。数十台ある機械に製造指示の再割り当てを行うわけです。これをスムーズに行わないと工場中が混乱してしまいます

このような問題を解決すべく、システムの設計を行います。設計だけで1年かかる大掛かりなものです。

そして本当に大きな問題は「私にお任せを!」って言った私自身が、生産管理システムの経験はなくMRPなんて聞いたこともなかったという事実です。

なんとか早く勉強をして、質の高い要件定義サービスを顧客に提供する必要がありました。何の経験もない私が唯一もっていた資源が通勤時間です。
当時静岡県沼津市から新幹線通勤していたのですが、顧客の工場は埼玉にありました。片道3時間半かかっていたので1日7時間の勉強時間があったのです。

そこで、MRPの書籍で勉強をしながら、要件定義を進めていきました。
今でも覚えていますが、一章は「需要予測」2章が「資材計画」だったと思います。
どれくらい材料を仕入れ製造量を計算するかというロジックやデータ構造を
顧客のニーズを聞きながらMRPの王道と照らし合わせながら要件定義を決めていきます。

たまに顧客から
「そろそろ”物流計画”を考えたほうがいいのではないか」
と言われときは、ハッとしましたが、
”それはたしか9章「製造在庫・出荷・物流」に書いてあったな。まだ勉強してないぞ”
と思い顧客には
「いやいやまだ物流を考えるのは早いです。まず製造指示を固めましょう」
と話し、MRPの書籍の目次の順番通り要件定義を進めていきました。

今から考えたら冷や汗ものです。でも必死でした。

熱意が伝わったのか、顧客が私のやり方についてきてくれ、最適なシステムの要件定義を1年でまとめることができたのです。

1年たったら生産管理システムのことならある程度はわかるようになっていました。仕事の進め方を始め私のビジネススキルの基礎の原点になったこの仕事に感謝しかありません。
ビジネスマンの最初の10年でモノの品質保証という仕事を叩き込んだその後、PDCAを改良したPDCFAサイクルというメソッドで人材育成の品質保証(効果測定)で書籍を出すことになるとは。人生わからないものです。
今、26歳の自分に会えたら伝えたい言葉があります。
「いいんだよ。そのやり方で」と。

偉そうなことは言えませんが、若者に伝える教訓があるとしたら
「自分の成長を楽しむ。そのためには、仕事の質を高め続け、それを顧客にぶつける」
ことかなと思います。

この紙コップの工場の生産管理システム構築の仕事を単に「システム開発」の仕事と思っていたら、だたの辛い仕事だったと思います。
私は、必死に勉強して、利益の出る理想的な工場のためのMRPの実現を追求しました。相手が工場長であろうと、怖い現場の職長さんであろうと、中間在庫は破棄するよう依頼しました(当時計算では在庫を持つ方が赤字になる計算でした)。

26歳の青二才の青年の言うことを、顧客が耳を傾けてくれたのは、その理想の工場を作りたいという私の熱意が通じたからだと思います。
(勉強しながらやってることくらい、相手は見抜いていたと思います。汗)

ぜひ「顧客ことを真剣に考えた上でなら、反対意見も迷わず言う」
というスタイルは参考にしてもらえたらと思います。

これが、私の
 「私にお任せを」って言っちゃった手前引くに引けず
   本を読みながらの綱渡りのコンサル
の話でした。

このあとのシステム開発のフェーズでもそれまたドラマが多数あったのですがそれはまた別の機会に書けたらと思います。

今日も最後まで読んで頂きありがとうございました。

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永谷研一/ネットマン社長ブログ
株式会社ネットマンの社長ブログです。発明家、行動科学専門家として教育改革に寄与しようと日々奮闘しています。ここでは教育クラウドの導入現場の話や、教育ICTの開発秘話、キャリア教育実践の話、また著書「できたことノート」メソッド解説など私目線で感じたことを上げていきます。