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全国学力・学習状況調査をプロジェクターの活用度で考察してみた

文部科学省が小学6年生と中学3年生を対象に2022年4月に実施した全国学力調査の結果が発表されました。
各県が全国平均と比べたニュースを流している危うさは、多くの友人がすでにnote等で意見を述べていますのでここでは書きません。

今日はこの調査の中のICTの項目のついて書きたいと思います。
この調査の中で、ICT活用について以下のような「問い」があります。

(66)前年度に,教員が大型提示装置(プロジェクター,電子黒板など)などの ICT機器を活用した授業を,1クラス当たりどの程度行いましたか。
1 ほぼ毎日
2 週1回以上
3 月1回以上
4 月1回未満

授業の中でプロジェクターの活用について聞いています。
この設問があること自体が今の学校の実態を表していると思います。
それは
「プロジェクターを週1使えばまあ良しとする」
ということです。

教育効果測定に長年携わってきた身から見るとこのような4択の設問は中央値から良いか悪いかの度合いを測っていると言えます。
すなわち
1が大変良い
2がまあまあ良い
3が少し問題がある
4が大いに問題がある
(逆転設問の場合この逆に設定する場合あり)
ということです。
とすると
プロジェクターを使う機会が
2 週1回以上
でまあまあ良いと設問設計者が考えているということです。

ある県の発表サマリーでは、
3.月一回以上
と答えた生徒が95%だったことを上げて、

「肯定の割合が高いので、ICT学習活動が推進されている」

と考察しています。この考察は少し早合点していると考えます。

この設問は
「単にプロジェクターを使っているかどうかを聞いている設問」
という見方をを変えて、アクティブ・ラーニングに重要な
「共同注視」の道具
として使われているかを聞いている設問であると捉える必要があると考えます。

「共同注視」とは、1つの場所(たとえば大きな模造紙)にみんなの意見を書いてみる、並べて見ることによって、同じ方向でものごとを見さて問いをフォーカスさせたり、他者の視点を自分の意見と見比べることによって多様な学びの創発をする手法です。


今までも授業のさまざまな場面でこの「共同注視」は使われてきたはずです。

プロジェクターはPC・タブレットやスマホから上げられた皆の意見や考えを1つの場所に瞬時に共有することで多様な意見による学びの場を作り出します。
「主体的で対話的深い学び」が問われて、探究が重要な授業において、また、児童・生徒一人一台になったこの状況で、プロジェクターを使った「共同注視」を毎回の授業で使わないことは私にはイメージつきません。

よって単にプロジェクターを週一回使ったことが良しということではないのです。おそらく週一回使うかどうかなんてものは電子教科書の動くデジタル教材を投影して見せた回数程度の計測にしかなりません。(今まで先生が使われてきたアナログ教材の方が優れている場合が多いです)

ここまでクリティカルに書きましたがが、上記の私の指摘くらいのことは、この調査の設計者はわかっていると思われます。

その証拠につづけた設問に

(67)教員は,学習履歴(スタディ・ログ)をはじめとした様々な教育データを, 生徒の状況に応じた指導に活用していますか。
1 よく活用している
2 どちらかといえば,活用している
3 あまり活用していない
4 全く活用していない

があります。これを「指導に活用」だけと捉えると「授業中の活用」ではなくなって面談など1対1の場面で使っていることを聞いているように感じますが、見方を変えると、
授業中に生徒が発言(ICTに書き込んだ)さまざまな意見を活用して学びに活かしているか?ともとれます。
すると
この(66)と(67)の設問の相関関係をデータ分析することで、単にプロジェクターをたまに使っているかどうかを調べているのではなく、共同注視の道具としていアクティブラーニングが行われているかを調べているとも言えます。

なお、私の会社がある静岡県では追加質問として、
ーー
・学校で,授業中に自分で調べる場面で, PC・タブレットなどのICT機器を,どの程度使っていますか
・学校で,学級の友達と意見を交換する場 面で,PC・タブレットなどのICT機器を, どの程度使っていますか
ーー
という設問を設定して上記の私の問題意識の点をしっかり調査されています。このあたりもしっかりデータ分析・考察することでさらにアクティブラーニングが推進されると思います。

いずれにしろ、この全国学力調査が教育を前に進めるために、先生たちの努力が正しく見られて、子供たちにとってより良い使われ方をすることを期待しています。

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