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給特法4%見直し。では先生は何をする?

教員の残業についての法律が変わろうとしています。

公立学校の先生の給料は、教職員給与特措法(給特法)によって、
基本給の4%が上乗せされる代わりに残業代は支給なしとなっています。
これが、「定額働かせ放題」と揶揄されている問題です。
これを解決するために新しい法案として3つの案が自民党の委員会で検討されているとのことです。

案1)給特法を廃止し、会社員と同じように時間に応じた残業代を支給
案2)給特法4%を十数%まで引き上げる
案3)給特法4%を数%引き上げ、担任や部活や主任などの役職に相応の手当を上積み

案1)の一択であるのは当然ですが、その前提に教員の仕事の見直しが必要と思います。

参考情報として、
「国立教育政策研究所」の2015年の報告「諸外国の教員数の算定方式に関する調査報告書」のイギリスの教育改革で教員がしなくてもいい仕事が紹介されいます。(部活はそもそも教員の仕事でないので入っていません)


・集金・欠席管理・試験監督・教員の補充業務・大量の印刷・文書作成・標準的な通信文の作成・学級とリストの作成・記録とファイリング・教室の掲示物の提示・出席状況の分析・試験結果の分析・児童生徒のレポート整理・コンピューター等のトラブル対応及び修繕・ICT機器の新設時の委託業務・物品注文・物品の分類、準備、配布、管理・会議の議事録等の作成・入札コーディネートと文書提出・個別アドバイスの提供・児童生徒データ入力・職業体験学習の運営業務・試験の運営業務

国立教育政策研究所 諸外国の教員数の算定方式に関する調査報告書(2015) P.74


これら全部がイギリスでは教員がやらなくていい仕事として法律で決まっているというのですから驚きです。「教室の掲示物の提示」は先生の仕事ではないのです。
イギリスと同じことを、事務員が足りない日本で実現するのは難しいですが、日本の先生にとってもやらなくていい仕事はたくさんあるでしょうし、今の仕事の仕方を改めICTを積極的に活用することで、生産性が著しく向上する仕事はたくさんあります。

ぜひ、政府に法案を提出するとき、給特法を廃止とセットで、教員が
・やらなくていい仕事
・ICTを使うべき仕事
をはっきり定義してほしいと思います。

ところで、このような働き方改革の目的は何でしょうか?

先生の一丁目一番地は「授業」です

先生に余裕ができれば、教材研究や授業改善に時間を費やせます。よって働き方改革の目的は、時代の変化に応じた「授業の改革」とい言えます。

そのためには無駄な仕事を減らしたり残業代を認めると同時に、毎日の授業評価の運用が必須かと思います。

生徒による授業評価を行い、その授業のどの点が素晴らしいのかを明らかするのです。そして、その情報は即座に教員同士で共有できるようにして、タイムリーに授業改善に活かす環境を整えるのです。

一方で、管理職はこのような基礎データを元にしてカリキュラム・マネジメントに活かせます。学校全体で授業の連携によるカリキュラム・デザインを考えて実施できます。するともっと生徒一人一人が持つ力を引き出し、これからの時代を生きる力を育めるはずです。

日々改善されていく授業。そのための給特法見直しや働き方改革。この順番を間違えてはいけないと思います。

そのためには校長先生の前向きな明るい雰囲気づくりが大切になります。
すると、より良い授業を行おうとする先生の挑戦が起こり日々の授業改善が進みやすくなります。時には失敗したとしても、そのチャレンジをお互いにリスペクトして前向きに改善していく学校文化作りに繋がるでしょう。

校務DXや教務DXが進まない大きな原因が
・校長という役職が上がり職となってしまっている
という課題があると感じます。
校長先生が改革を推進しきれていない姿があるのです。
このような学校は教員の協力も進まず、管理職が孤立しているように見えます。教員は自分に火の粉が降りかからないように表向きはやっているように見せかけ、実は全く進んでいないという状態に陥っているのです。

今回の給特法の見直しは、このような根本原因に手をつけずして効果は発揮しません。

先生の仕事は「魅力的な授業」をすること。生徒の未来のためになる教育を行うことです。
そして先生自身もそれを望んていると思います。なぜならその科目を学ぶ喜びを知っているからです。
私は教育は熱だと思っています。熱は人間から人間にしか伝わりません。

今回の改革で、先生のもつ熱を最大に発揮できる学校文化が出来上がっていったら素晴らしいなと思います。