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統計調査をその場で行い、生徒の興味を引く授業とは

Cラーニングのユーザーの大学は団体契約のユーザーと個人契約のユーザーがいます。個人契約のユーザーで最長で使ってくださっているのが青山学院大学の寺尾敦先生です。ケータイ活用研究会や情報コミュニケーション学会でご一緒することが多く、とてもユニークな授業をされる先生です。

そんな寺尾敦先生の「統計学入門」での授業でのICT活用事例をお伝えします。

プロスペクト理論って知っていますか?

プロスペクト理論は行動経済学の理論の1つで、利益や損失に関わる意思決定のメカニズムのモデルです。
人間は「得」よりも「損」が重視する特性があるというもの。

例えば10万円もらった嬉しさより、10万円失った(なくした)悔しさの方が2倍以上強く感じるというものです。得をして、やった!嬉しい!という感情より、損をして、なんだよーガッカリ!という感情を強く感じるというものです。
これを、プロスペクト理論では、「価値関数」といいます。

さて、この理論を授業に生徒たちに説明するのに、教科書と座学だけで説明したらどうでしょうか。小難しくて、ついてこれない生徒も出てきそうですよね。

そこでICTを活用する場面があります。
この理論を理解するために有名な手法が、人間はA案とB案のどちらを選ぶかという「くじ問題」があります。
そのくじ問題を、生徒たちに実践させるのです。その結果(統計データ)を見て、理論通りになることを説明していきます。

あなたはどちらのクジを選びますか?
設問1
あなたは2万円もらいました。次にクジを引かなくてはいけません。どちらのクジを選びますか? 
 A:確実に5000円もらえる
 B:確率25%で2万円もらえるが、確率75%で何も得られない
設問2
 あなたは4万円もらいました。次にクジを引いて罰金を払わなくてはいけません。どちらのクジを引きますか?
 A:確実に罰金1万5000円を払う
 B:確率25%で罰金を免除されるが確率75%で2万円取られる

この実践を行った貴重な取材ページが残されていました。
青山学院大学で行った寺尾先生の授業の様子をNTTコムウェアさんが取材した12年前の取材記事です。
「ケータイの導入で、授業の現場はどう変わる?」
(この記事は、ガラケーでも動いたCラーニングを見ることができる貴重な資料です。上記リンクからご覧ください)

94人の生徒が授業中にその場で回答しています。

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設問1(得をする)では、Aを選んだ学生は59人、Bは35人。
実際の期待値は同じ5000円なのにも関わらず確実に5000円を選ぶ学生が倍近くいます。
設問2(損をする)では、Aを選んだ学生は31人、Bは63人。
実際の期待値は同じマイナス1万5000円なのにも関わらずB案で免除になる可能性の勝負にかける学生が倍以上います。

寺尾先生はこのリアルタイムに行われた自動集計データを見せながら、学生たちの興味関心を喚起した上で、プロスペクト理論の「価値関数」を解説していきます。

特筆すべきは、この授業が別に実験の授業ではなく、通常の授業ということです。

教員にとって、生徒の一人一台の端末を前提とした授業デザインを行えるということ。アイデアは教員次第。教科の専門性を活かせて楽しい時代ですね。

寺尾先生いつもありがとうございます!また面白い授業実践を見学させてください。